解離

解離とは

解離とは、トラウマに対処するための心理的リソースが不十分なときに、心を守るために現れる心の防衛機制のひとつです。

解離は、心理的に耐えられる範囲を超えた有害な状況に直面したときに「スイッチを切る」心の適応的なメカニズムで、複雑な状況下での恐怖、緊張、痛みの影響を制限する、一種の感情的な距離を確立するものです。

その発動は本能的なものなので、意識して発動することはありません。

レイプや児童虐待の被害者によく見られる症状で、このような場合、被害者は他に逃げ道を見つけることができないからです。

この受動的な防衛機制により、解離性エピソードと呼ばれるものでは、トラウマ的状況に直面して、一種の感情的麻酔と身体的麻痺を引き起こします。

なお、解離は人間だけの防御機構ではなく、一部の動物にも生得的に備わっており、捕食者に襲われないように解離を利用しているそうです。

したがって、解離は、心が肉体にいたくないときの反応として認識することができます。

本元記事…解離 - セットで学ぶ心理学 

解離のメカニズム

トラウマになるような状況では、常に複数の困難が生じます。

このような状況は、感情的な面だけでなく、肉体的な面にも影響を及ぼし、重要な消耗を生み、それが時としてさまざまな現象の引き金となります。

最も一般的なもののひとつが解離です。

解離とは、感情的なつながりの欠如のことです。

より専門的な見方をすれば、解離とは感情的なつながりの欠如であると言えます。

発生すると、脳機能が反応して前部皮質のスイッチを切るため、人は意識的に 行動を規制することができなくなるのです。

また、扁桃体は、海馬の働きを抑制するホルモンであるコルチゾールの分泌を誘発します。

海馬の機能が低下すると、人は経験を自分の人生史の中に位置づけ、意味を持たせることができなくなるのです。

一方、精神的・肉体的な痛みを軽減する作用を持つ神経伝達物質であるオピオイドが生成され始め、天然の鎮痛剤として作用するようになります。

解離性危機に見られる感情的なつながりの欠如は、こうした過程によるもので、危機的な状況において患者が苦痛の表情を見せず、何が起こったかを思い出すのが困難であることの説明となります。

日常生活における不快な解離状態の例

解離状態が健常者にもしばしば生じるからといって、それが不快であり得ないということにはなりません。

不快な解離の日常的な例もいくつかあります。

◆一日の仕事を終えて「虚しさ」を感じる瞬間
長い集中の後、たとえ数秒でも数分でも自分の周りの空間に戻り、虚無感に襲われるとき、このような状況でも私たちの思考、行動、感情は、周囲の認識と切り離されています。

説明された解離症状が快いものでなくても、軽度の解離症状と呼ばれることがあります。

◆精神的ストレスにおける解離性症状
厳密に言えば、説明したようなストレスのかかる状況では、気分が悪くなるので、精神は秒単位で健全ではありません。

しかし、すでに精神的なストレスを受けている人に解離症状が起きると、その違和感はまったく別の次元のものになります。

解離性健忘症

健忘症というと、物忘れがひどいとか、何かを思い出せないということを連想します。

これが解離と関係があることは、多くの人にとってあまり明白ではありません。

いわゆる 「解離性健忘」とは、ストレスやトラウマが原因で起こる記憶喪失や記憶の喪失のことです。

私たちは、生活の細部まで覚えていないのが普通です。

上記のように、炊飯器のスイッチを切るときに、十分に意識していなかったために、本当に切ったのかどうか忘れてしまうことがあります。

厳密には、解離によって生活の中のある出来事を忘れてしまうので、これも解離性健忘と呼ばれるものです。

しかし、普段は特に印象的な、(良くも悪くも)特別な状況を覚えているものです。

私たちは通常、誰かに身体的または精神的な暴力を受けたとき、それを記憶しています。

また、誰かが身体的、感情的に美しい方法で私たちに触れたとき、私たちは通常、このような状況をかなり意識的に知覚しているからこそです。

そして、私たちのアイデンティティを形成する心理的な装置全体を使って、それを処理するのです。

しかし、非常にストレスの多い状況やトラウマになりそうな状況を認識すると、その状況を意識的に認識したがらない傾向があります。

それは、私たちの精神が処理しきれないほど大きなものなのです。

そのような状況は、やがて解離につながります。

解離では、上記のように、自分の精神機能と自己が一体として経験されず、したがって意識的に知覚されないので、人生のある種の形成的な出来事を思い出せないということが起こりうるのです。

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